和歌山県租税教育推進連絡協議会

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全国納税貯蓄組合連合会優秀賞
文化と税金
和歌山市立貴志中学校 3年
狗巻 諒祐

4年前の秋、我が家にタイからの中学1年生、カナポッドがホームステイした。わずか1週間だったが、楽しい時間を過ごした。彼は日本文化に興味があり、和歌山城で忍者の格好をしたスタッフの人に刀を持たせてもらい、うれしそうにしていた。天守閣からおりて土産物屋に立ち寄り、熱心に自分とお母さん用にと日本柄の扇子を見ていた。値札も見て慎重に選び代金の支払いのとき、消費税の10%の分も支払わなければならないことに、彼は少し混乱した。父が説明して税だとわかったようだった。

それが、僕が消費税や税の仕組みは国によって違うと知ったきっかけだ。税のことを考えていなかったと彼が買い物の後で言った。タイにも消費税はあるが7%で、消費者が買い物をするときの値札は税込価格の表示のみで、税込みとも書いておらず、税を支払っているかどうかはレシートを見て初めてわかるそうだ。

その日は和歌山城の中の展示物を、カナポッドとゆっくり見て回った。彼は刀や鎧・かぶとに興味を持ち、掛け軸の日本画や徳川家の駕籠なども見た。彼に英語でその時は説明できなかったが、参勤交代のときに使っていた駕籠なのだろうかと想像すると胸が高鳴った。駕籠は傷んでいたが、教科書に載っている写真からは伝わってこない実感を、歴史的な文化財を生で見ることで得た。個人が管理しきれない文化財は、国や都道府県が管理していて、それには税金が使われていると知った。管理できずに放置されたら、文化遺産はどんどん消えていってしまう。何年か前に描いた自分の絵ですら、家に飾っていたらほこりがかぶり色あせてくることを考えたら、何百年も前の文化財を保存するのに、どれくらいの努力や費用がいるのだろう。入れ物に入れ収納場所を考え光・温度・湿度を調整したり、展示するときには様々な道具を用いて工夫したり、修復したり。税金はこのような、個人の力ではできないことをするためにあるのだと感じた。

和歌山には、カナポッドと訪れた和歌山城を始め、紀伊風土記の丘の古代の遺跡、秀吉の水攻めの遺構、県南部の熊野の世界遺産・自治の名残など大切な文化財がある。東日本大震災や最近よく起こる豪雨災害では、多くの文化財が失われたり傷んだりした。歴史からできるだけ多くのことを学び、過ちを繰り返さないために、歴史を物語ってくれる文化財は、できる限り大切にして観賞して未来に残していきたいし外国人にも紹介したい。中学生になって歴史を詳しく学んでそう思うようになった。文化財保存は税金の使い道のひとつだと知った。これから始まる公民の時間にしっかりと学んで、カナポッドに会う機会があれば、消費税などの税についての話も今度は僕がしてみたいと思う。

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