髙岡 那々星
和歌山県は、その面積のおよそ76%が森林で占められている。
そんな和歌山県で育った私は、自分の周りに広がる森林に親しみを覚え、同時にその存在感に圧倒されてきた。
そんな私だが、昔は、森林のことは何も知らなかった。
しかし、小学校5年生で森林体験学習を受けると、森林について様々なことを知ることができ、森林をより一層身近に感じるきっかけとなった。
特に、実際に木を切る体験では、木は「もの」ではなく生き物だということを実感し、感謝しようと思えた。
このように、和歌山県では学校で森林体験学習が行われており、子供が森林や林業に関心を持つ機会が充実している。
こういった催しは、和歌山県独自の税金「紀の国森づくり税」で得られた資金で運用されている。
和歌山県によると、紀の国森づくり税とは平成19年に導入が開始された税金で、納める額は、個人の場合、1年あたり500円だ。
森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いでいくことを目的としている。
例えば、適切な管理がされず放置された「放置森林」の整備やシンポジウム開催、森林体験学習を行ったりするのに利用されているそうだ。
たしかに、森林は人間にとって必要不可欠な存在だとは思う。
しかし、和歌山県には森林が多いのに、どうして税金を取ってまで保護しなくてはならないのか。
そう思った私は、和歌山県の森林について詳しく調べることにした。
和歌山県は古くから林業が盛んで、「紀州材」はとても有名だ。
しかし、現在は木造でない建物が多くなり、木材の需要が減った。
和歌山県によると、平成16年の素材生産量は約30万㎥だが、令和2年には16万㎥ほどまで減少している。
その結果、林業従事者の収入が減り、担い手が減少した。
そして間伐などが行われなくなって放置森林が増加したそうだ。
和歌山県内の放置森林は全体のおよそ30%らしい。
放置森林が増加すると、土砂災害のリスクが高くなったり、土壌の保水性が低下し洪水を悪化させる可能性があるという。
驚いた。
私の目には森林はどれも同じに見えるが、その3割は危険性が高い放置森林なのだ。
私の家の周りには森林が多くある。
もしそれが放置森林だったとしたら…
紀の国森づくり税が、放置森林の整備を通してそんな危険を少しでも減らしていると考えると、必要な取り組みだと思えた。
私達が払っているお金が、見えないところで森林を、私達の安全を支えてくれているのだ。
森林は、いつの私のそばにある。
それが当たり前だと思っていた。
しかし、当たり前ではないことを知った。
紀の国森づくり税が、和歌山県の豊かな森林の存在を支えてくれているのだ。
このことを忘れずに、私はこれからも森林とともに生きていきたい。





