上村 聖奈
森林環境税を知っていますか?
この税金は2024年から始まり、国民一人当たり年間1,000円が課税されています。
住民税に上乗せされる形で徴収され、全国の自治体に分配、森林の整備や保全活動に使われています。
私の祖母の山はこの税の恩恵を受けています。
今年1月私の母が祖母の代わりに森林組合で行われた新春初競りに山主として参加しました。
この行事は木材業者にとって1年の始まりを祝う大切なイベントであり、縁起物として高値で取引されることもあります。
母が小学生の頃植林した杉と桧はまだ小さいので競りには出せないと言っていましたが、祖父や曾祖父が育てた木が競りに出されました。
4年前に亡くなった祖父は林業従事者ではありませんでしたが、山の手入れをしっかりしていました。
手入れをする人がいなくなった今、この森林環境税で祖父の山は「使って育てる循環型の山」に生まれ変わろうとしています。
森林組合の方が祖母の山に作業道をつける話を持って来て下さり、木材の伐採や運び出し、森林の手入れ、保全作業をする人や機械が通れるように考えてくれました。
その作業道周辺に植林していた木は伐採され、初競りに出されることになったのです。
母の曾祖父が書き記した明治22年の水害日誌によると、この山の近くの川で山の深層崩壊が起こり、川の流れをせき止め、土砂ダムがされたとありました。
作業道は山の中で起こる土砂崩れや火災などの災害時に復旧ルートとして使われます。
作業道は、木を運ぶだけではなく森を守り、地域の人々の暮らしや安全を維持する道として必要なものです。
森林環境税によって、祖母のように森林所有者は整備費用の支援が受けられ、地元材の活用や木材の普及啓発に税金が使われることでその価値が高まりつつあります。
さらに、国が徴収した森林環境税を、私有林の人工林面積・林業従事者数・人口などの基準に基づいて市町村と都道府県に分配したものを「森林環境譲与税」といい、その税は学校の机の天板や教室の床材に活用されています。
無垢の木材で作られた机や教室で学ぶことは、子どもたちの心身の健康や学習環境の質を高める効果があることが近年分かってきました。
私の家の柱や梁や床板は、祖母の裏山にあった先祖が植えた桧を伐採して建てた家です。
裏の山の桧を見に行ったとき、腕を木の幹にまわしても全てを覆えないほど、巨木でした。
先祖の手によって植えられた木が今の私の暮らしを支えてくれているのです。
森と人が長い年月をかけてバトンを渡してきたように感じました。
そして私もそのバトンを未来の人に渡していきたいです。
和歌山の森を守ることは、私たちの暮らしを守ること。
税金も、森を未来へつなぐための大切な力の一つなのです。





