榎本 幸喜
僕が5歳だった頃、僕の父は一次性膜性増殖性糸球体腎炎という腎臓の難病を患いました。入退院を繰り返し、今でも毎月の通院、検査、毎日の投薬治療が続いています。そんな父が、税金の助けにより治療を受け続けることができていると知ったのはごく最近のことです。
母が父の病気が発覚したときのことを思い返して言った言葉で、僕は初めて税金によって父が助けられていることを知りました。
「あのときは本当に不安だった。これからお父さんがどうなるのか。生活のことや、お金のこと。でも、あの制度のおかげで、その負担は軽くなった。お父さんだけでなく私たち家族は、税金に救われたの。」
「あの制度」とは、「指定難病医療給付制度」のことです。難病は、治療法が確立されていないこともあり医療費がとても高額です。ですがこの制度により、指定医療機関での医療費負担割合は2割、もしくは自己負担上限額になります。税金のおかげで父の医療費負担額が大幅に軽減されていると知り、そのありがたさを実感しました。また同時に、私たちが普段納めている税金が、父のように病気で困っている人のために使われていることが分かり、とても嬉しかったです。
そして、世間を一目見渡すと、私たちが医療だけでなく沢山の面で税金に助けられていることが分かります。学校や図書館、公園などの公共施設の建設、維持。火事や事件の際に迅速に対応してくれる消防や警察。ごみ収集や信号機の設置といった環境整備。学校で授業が受けられたり、教科書が無償で提供されたりといった、教育の充実のためなど。私たちが「当たり前」だと思っていることが税金によって賄われているのです。父の病気をきっかけにして、税金の仕組みに興味を持ったことで、いかに税金が社会で重要な役割を果たしてくれているかを学ぶことができました。
ですが、世間の税金に対するイメージといえば、悪いものが多く聞こえてきます。僕はその理由が納税に対する考え方からくるものなのではないかと考えます。税金が使われている道が、あまりにも社会にとって当たり前すぎる。当たり前だからこそ、意識しないと見えづらい部分がある。納税で、社会の当たり前を持続可能にすることができる人だ、という意識を持って皆が納税すれば、世間の印象も変わってくるのではないかと思います。
僕は税金が社会に必要不可欠であることを、父の病気を通して知りました。税金が私たちの当たり前を作ってくれていることを、より多くの人が知るべきだと思います。また、税金の使われ方や、沢山の良い面も知ってほしいです。
僕は将来、納税の義務と価値を理解している、立派な納税者になりたいです。持続可能な当たり前を、税金で作っていくために。