和歌山県租税教育推進連絡協議会

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全国納税貯蓄組合連合会優秀賞
私たちの心と体の拠り所
御坊市日高川町組合立大成中学校 3年
文蔵 理世

姉がアメリカのロサンゼルスにホームステイしていた時、突然赤い発疹が出始めた。あっという間に体中に広がった。とても不安で日本にいる母に電話で相談したが、ホストマザーにはなかなか言い出すことができなかった。ホストファミリーがどのような民間保険に加入し、普段、どのように医療機関を利用しているかわからなかった。

日本の医療制度は、国民全員が公的医療保険に加入し、皆で保険料を出し合い助け合うことによって支えられている。だから、体に変調を感じたら、保険証一枚ですぐに医療機関を受診でき、そして、自己負担分の医療費だけで、診察や薬などの医療サービスを平等に受けることができる。私達はそれを当たり前のように思っているが、世界中全ての国が日本のような制度を有しているわけではない。

例えば、アメリカの公的医療保険は、65才以上の高齢者と障害者等を対象とする「メディケア」と、低所得者を対象とする「メディケイド」のみだ。この二つでカバーされない現役世代は、民間医療保険への加入が義務付けられているが、加入する保険によって受診できる医療機関や治療内容には制限がある。世界最高水準を誇り、競争を重視するアメリカの医療費は非常に高額になることが多く、経済的な理由から保険に加入しない人や、医療機関にかからず、市販薬で済ます人も多いらしい。

幸い姉のホストファミリーは経済的に余裕があり、きちんと民間保険に加入していた。同じ家にステイしていたもう一人の学生も発疹を出したため、ホストマザーが異変に気付き、かかりつけ医に連れて行ってくれた。医師によると、アメリカの洗濯洗剤の香料にかぶれた可能性が高いとのことだった。かかった医療費は数万円。弁済を申し出たが、ホストマザーは、「自分達の責任だから」と受け取らなかった。

今回のコロナ禍で、外国と比較して日本人の感染率や死亡率が低い理由についてBCG接種や清潔好きな生活習慣等、様々な理由が挙げられているが、私は公的医療保険制度の存在も大きな役割を果たしていると思う。どんなに体が丈夫な人でも、弱点はあるし、病気にもなる。そして、「病は気から」という体調を崩した時に、誰もがすぐに信頼できる医療サービスを安心して受けられる制度の存在は、私達国民の心と体の拠り所となっている。もし、公的医療保険制度が存在せず、不調をごまかしたり、市販薬で済ましたりせざるを得なかったら、あっという間に病状が悪化したり、気付かないうちに周りの人を感染させたりするだろう。人類が近年経験したことのない異常事態に際して、当たり前のように享受している制度の利点を再確認し、その制度を維持するために働いている全ての人達に心から感謝したいと思う。

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