上野 心優
「優勝、上野心優さん。海南中学校。」
プールサイドに響いたアナウンス。そして、一番高い表彰台に上がった最高の瞬間でした。
東京オリンピックの話題がテレビで取りあげられる今年、中学校最後の中学校総合体育大会が、秋葉山公園県民水泳場で行われました。今年の目標は、個人種目で優勝することだったので、とても幸せな時間でした。この大会では、百メートル背泳ぎが優勝し、四百メートル自由形で二位という成績を残すことが出来ました。また、団体種目である四百メートルフリーリレーで優勝、四百メートルメドレーリレーが二位と、出場種目すべてで表彰台に上がることが出来ました。更に、女子総合では、二位という結果に驚きとうれしさでいっぱいになりました。
帰り道に、母が私に、
「よかったなー。おめでとう。だけど、この優勝は、一人の力だけじゃないよ。どういう意味かわかる?。」
その時は、コーチや両親や応援してくれている人のことだと思っていたけれど、『応援してくれている人たち』とは誰のことなのか、もっと色々考えたり調べたりしました。そして、一つのワードに辿り着きました。それは“秋葉山公園県民水泳場”です。
私たちが大会で利用している秋葉山公園県民水泳場は、平成二十七年の紀の国わかやま国体に向けて建て替えられた紀州材を使ったプールです。黒潮国体の時に建てられたプールは屋外で、夏場しか利用出来ないうえに、水温調節が難しいプールでした。老朽化のため、新しいプールが建設されました。新施設は、五十メートルと二十五メートルプールが屋内にあり、年中利用出来るようになりました。
この新しいプールの総工事費は、約九十億円です。金額が大きすぎてピンときませんが、一億円の重量が約十キロ、高さが一メートルらしいので、重さは九百キロ、高さは九十メートルになります。そのうち半額は、国からの補助金で賄われました。つまり、国民が支払った税金がこのプールの建設に使われたことになります。
ここで、やっと母が言っていた“心優の力だけじゃない”の意味がわかったような気がしました。みんなが建ててくれたプールがあるから、おもいっきり練習したり、いいレースが出来るのです。
もうすぐスタートする消費税の増税などマイナスイメージが多いですが、税に支えられているのだとあらためて感じさせられました。感謝の気持ちを忘れず、たくさんの方々が建ててくれたこのプールで、今自分に出来る精一杯のパフォーマンスが出来るよう、これからも努力し続けたいと思いました。そして、私が大人になった時、税の大切さを次世代の子ども達に伝えたいと思います。