和歌山県租税教育推進連絡協議会

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全国納税貯蓄組合連合会会長賞
あっちゃんのピアノ
白浜町立富田中学校 3年
榎本 菜々子

我が家には五年前から「あっちゃんのピアノ」と呼ばれる一台のピアノがある。あっちゃんとは私の母の兄にあたる。十五歳の時国が指定する難病にかかってしまった。そんな叔父がプレゼントしてくれたピアノ、だから「あっちゃんのピアノ」と呼んでいる。

叔父は病気のため働くことが出来ない。すなわち収入のない人生を送っている。それでも高価なピアノをなぜ私たちに贈ってくれたのか。祖母に話を聞いてみると、昔から貯めてきたお年玉やお小遣いを使ってくれたという。そしてさらに「障害年金」という国の税金制度が叔父の貯金では補えない分を援助した。この制度は、国に指定されている障害等級の一級、二級に値する難病を抱えている人達の収入を国が補償する、というものだ。障害年金を受けるには二十歳からの年金にきちんと加入していないといけない。この障害年金は叔父の生活費や通院代に使われるほか、本人の楽しみに使ってもいいらしい。

私は今も時折ピアノを弾く。ゆっくりとしたい時、気分を変えたいとき。そのあとは必ずピアノを磨く。叔父のことを考えながら磨く。「十五歳で難病にかかって、ずっと痛みや苦しみと戦って今では寝たきりとなってしまって、あっちゃんは幸せなのかな」私の心の中では答えは出ないけど、磨かれて輝くピアノを見た瞬間、「だけどあっちゃん。あっちゃんにこんなにも素敵なピアノを買ってもらった私はとても幸せものだよ。健康である限り私はあっちゃんの分も何事も一生懸命頑張るよ」と思う。

「障害年金」は国民が払う税金から支払われている。私の父母も毎月支払っている「所得税」、買い物をした際に支払っている「消費税」、そのほか国民みんなで集めたお金の一部が叔父のような難病と戦っている人々に支払われ、ピアノへと形を変えたのだ。そう思うと税金のありがたさがよく分かる。

今は税金の恩恵を受ける機会が多い私だが、将来は税金を支払い、そしてその使い方が妥当なものなのかを考えられる自立した大人になりたいと思っている。今までは消費税が上がるという情報を耳にすると税金がどのようなものか、どのように使われるのかを知らずに不満を漏らしていた。しかし、今回この作文を書く機会を通して、身内が税にも助けてもらっていることを知ることが出来てよかった。そして税が誰かの力になるのならとても素敵だな、と思うようになった。

公的な支払いを拒否する人が増えてきている今、私が税への考えを深めることが出来たような機会が増えていけば、社会もなにかが変わってくるのではないだろうか。

これからは健康なからだであることに感謝しつつ、あっちゃんの分も頑張って、全力で今を生きていきたい。ありがとう、税金。ありがとう、あっちゃん。

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