文蔵 理世
小児科の窓口で、いつも不思議に思っていました。「お医者さんに診てもらったのに、お金を払わなくていいのかな。」
私が住む御坊市では、18才まで子供の医療費は無料です。「お医者さんに行ってお金を払わなくていいなら、お母さん達は安心して子供を産んで育てることができるな。そして、生まれてくる子供達は家がお金持ちでも貧乏でも平等に医療サービスを受けられるな。ありがたい制度だな。」と、深く考えることなく感心していました。
でも、この間学校で税金の勉強をして、「そのサービスはただではない」ことを知りました。全国の約8割の自治体で子供の医療費は窓口での負担がゼロ、といっても、医療サービスの対価を全く払わなくてもよいというわけではありません。また、病院や診療所が無料で医療サービスを提供してくれるわけではないのです。
国民皆保険の日本では、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入しなくてはなりません。国民健康保険に加入していれば、医療機関を受診する場合、費用の7割は、納められた税金や国の補助金から支払われ、個人で負担するのは残りの3割だけで済みます。子供の医療費の窓口負担ゼロというのは、さらに、その個人負担分の3割を自治体が負担してくれるおかげで、窓口でお金を払わなくてよくなる制度なのです。でも、その自治体が負担してくれる費用も、国民健康保険税や国からの補助金にまかなわれている、決してただではないのです。
未来を担う子供達がお金のことを心配しないで医療サービスを受けられるのは本当に素晴らしいことだと思います。ある年齢まで無料で医療サービスを受けられるなら安心して子供が生めるということで、出生率低下に歯止めがかかるかもしれません。また、最近は自治体の子育て支援策を調べて、子育てしやすい地域を探して暮らす場所を決める人達もいると聞きます。医療費助成が若い子育て世帯を呼び込む町おこし的な効果も期待できるでしょう。
その一方で、窓口負担がゼロだからといって、軽症でも安易に医療機関を受診したり、急患ではないのに夜間休日診療を利用する人もいるそうです。過剰な検査をしたり、不要な薬を処方するお医者さんもいるそうです。
子供の医療費は決してただではありません。治療費の支払いには、税金が使われ、足りない場合には国の借金でまかなわれます。そして、将来、利子を付けてその借金を返していくのは私達自身なのです。私達は、私達が受けているサービスについて、きちんと勉強して、それを大切に利用していかなくてはならないと思います。