和歌山県租税教育推進連絡協議会

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和歌山県租税教育推進連絡協議会賞
千年の贈り物
紀の川市立粉河中学校 3年 廣橋 尚依

「紙って、どないしてつくるん。」どうすればこんなに薄くできるのか、幼稚園児の私は不思議で仕方なくて、母にそう尋ねました。私は、身の回りの様々な物のつくり方を知りたがる子供だったのです。ところが、そんな私も、それが「つくられた」ことに気付かなかった物がありました。道です。当時の私にとって、足元の道はあまりにも当たり前の存在だったからでしょう。

しかし、道は、土を固め、山野を切り開き、低地を埋めて人がつくったものです。田畑の畦道も通学路も高速道路も、人の小さな手がつくっていることに変わりありません。現在建設中の京奈和自動車道は、全線開通すれば既存の高速道路と結びつき、近畿地方を環状に走る道になります。その工事現場でも、巨大な重機を操作し、資材を手で運ぶ人の姿を見ることができます。

人が歩き、物を運び、街と街を結びつける道は、時代を問わず人の暮らしにとって重要な働きをしてきました。私の住む街には、江戸時代に紀州徳川家が参勤交代で用いた大和街道や、もっと古く千年以上も前に、大和朝廷が地方に延ばした官道の一つ、南海道も通っていたそうです。どの時代の道も、国家が計画し、労働力を集めてつくった公共施設であり、その建設費は人々が納めた税金で賄われています。和歌山県の租税に関する資料によると、京奈和自動車の場合、紀の川市部分だけで工費は一一六〇億円もかかったそうです。個人では、到底負担できない金額です。

私の先祖は、『枕草子』に「寺は」「粉河」とある粉河寺創建時、橋をつくるために都から来ました。彼らも南海道を歩いたのかと想像するうち、社会の時間に学んだ「租庸調」という歴史用語が、突然生き生きと私に語りかけてくる気がしました。稲を育て、布を織り、自慢の特産物を納め、労役に従事する…先祖たちが、そうして税を納めている姿が目に浮かびます。

そういえば、歴史の授業では、各時代の税について必ず勉強します。今まで、それを自分の生活と結びつけて考えたことはありませんでした。しかし、それぞれの時代の社会の礎となっていたのが税であると考えれば、しっかり学ばなければならない理由が納得できます。税は社会を支え、人の暮らしをつくり上げるために不可欠なものなのです。

こうして人が営々と築き上げてきた町に、私は今暮らしています。粉河は、七七〇年開創の粉河寺の門前町であり、私の先祖はその頃から、この地に住み続け、現代の私たちと同じように生活をし、税を納めて今に至る粉河をつくってきてくれたのです。先祖たちから渡された贈り物が、この町なのです。そう、私にも、子孫に贈り届ける社会資産をつくり上げる責任があるのです。将来、税金を納めることで、その贈り手になれることを、私は楽しみにしています。

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