石川 菜那
私には、今年87歳になる祖父がいる。
60歳で定年退職をし、年金受給者になって27年になろうとしている。
その祖父は言う。
「当時は60歳から年金が貰えた。今も2ヶ月に一度、お給料と同じように貰える。働けなくなった体にはとても有難い。」と。
私には今年22歳になる兄がいる。
大学4年生で勉強をしながらバイトをしつつ、国民年金を納めている。
その兄は言う。
「少子高齢化が進んでいるし、僕達が貰える年金はあるのかな。」と。
私は現在、15歳で納められる税金は、何かを購入した時の消費税だけだ。
その私は思う。
「税というのは年齢や生活状況によって納める側、受給する側が相互に助け合い成り立つものなんだ。」と。
税について考える時、一般的には「納めなければならないもの」とマイナスイメージになりがちだ。
それを180度変えてくれたのは、祖父の生活である。
祖父は80代では元気な方で、運転免許を返納してからは、電動自転車を乗り回し、老後を楽しんでいた。
もちろん、20歳から60歳までの国民が納めてくれた年金制度のおかげだと感謝をしていた。
そんな中今年1月の下旬、突然祖父の体は自由がきかなくなった。
自転車をこいでいた足はしびれ、歩けなくなった。
箸も満足に持てず、一人で食事すら出来なくなった。
家族も私も大変心配したが、とうとう寝たきりになってしまい、入院することになった。
高齢だし、もう仕方がないかと一時はあきらめムードになったが、病院の熱心な先生と、リハビリの看護師さんにたくさん助けられ、6月には退院することもできた。
だが、以前のように普通に歩いたり、食事をしたり、一人でお風呂に入ることは困難なままだ。
祖母と母は祖父の入院時からつき添い看病や、入院費用、退院後の生活に悩んでいたようだ。
そんな時、病院から市役所の介護保険制度についてアドバイスを頂き、介護が必要な方や家族を救ってくれる素晴らしい制度を教えて頂いた。
介護保険とは、要支援、要介護認定を受けるため、窓口に申請し病状に合わせ、1段階から5段階に区別される。
段階ごとに、受けるサービスに対して負担する金額が減らせる制度である。
祖父には、最も病状が深刻な、要介護5の認定がおりた。
祖父は言う。
「年金も貰い、介護まで負担して貰えて、本当に税金制度には感謝してもしきれない。」と。
それを聞いて22歳の兄は言う。
「国民年金を納めることを誇りに思うよ。」と。
兄も私も、必ず年をとる。
やがて働くのが難しくなり、現役世代が納めてくれた税金で生活する日が来る。
平均寿命がどんどん長くなり、介護する者、される者が増加していくだろう。
そんな時、手を差し伸べてくれるのが、税金だ。
税金を納めることは、必ずしもマイナスイメージばかりではない。
それどころか、私は兄のように、税金を納める自分に誇りが持てる大人でありたいと思う。
そして、すべての納税者に「ありがとう。」と伝えたい。





