西 悠斗
今年3月、僕の住む本州最南端の町、串本町で日本初民間ロケット「カイロス」が打ち上げられ、メディアも大々的に報道し、日本中の注目を集めた。
当初予定では2021年には初号機打ち上げを目指したが、コロナ禍でロケットの部品が揃わず延期が重なった。打ち上げは2日間に渡り、初日は打ち上げ条件が整わず延期。その4日後に再打ち上げとなった。
チャレンジ2日目。緊張のカウントダウン。ロケットは白煙を吹き打ち上がったが、5秒後に爆発。ロケットは空を突き抜ける事なく、成功は次回へ持ち越された。が、この2日間の経済効果は大きく、見学会場には2日間で約6,100人の見学者と多くの報道陣が訪れ、入場料だけで1,000万円超。他に見学者の宿泊費や飲食店、物産店の売上増にも繋がった。
そもそも何故、串本町に民間ロケットの発射場があるのか?遡れば平成31年3月26日、日本初民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」の建設が串本町に決定した事から始まる。少子高齢化が大きな課題である串本町。将来、町の活性化に繋がる起爆剤として、民間ロケット発射をプロジェクトとしたスペースワン社のロケット発射場施設の誘致を目指し、10年間で670億円程度の経済効果があると試算。ロケット発射に適した地形もあり、誘致に注力した。
そしてこの壮大なプロジェクトの舞台裏に税が関わっている事を僕は知った。串本町は誘致に向け、和歌山県の力を借りたのだ。ロケット発射場の建設には建設費用は勿論、土地の買収等莫大な資金が必要となる。その資金を和歌山県がスペースワン社に無償で融資する事で串本町への誘致に成功した。
そこに税が投入され、ネットで調べると、平成31年度和歌山県その他歳出金として、貸付金718億、うち小型ロケット射場建設支援21億、中小企業融資制度682億とある。融資故、いずれ返済される歳出金だろうが、こんな大きな金額の融資をしかも無償で行えるのは税のお陰だ。
数字だけ見ると膨大な税の歳出と感じるが、将来において消滅可能性自治体と言う言葉をよく耳にする昨今、一自治体の将来を左右する税の使われ方であり、これこそ税による未来への投資だと言える。この投資がロケット発射場の誘致へ繋がり、そこから5年後、串本町で民間初ロケット発射が実現した。この2日間で経済効果は実証され、5年前の未来への税の投資は着実に成長過程にあると言える。
一方で、今回、ロケット発射のPRとして串本町の老舗菓子店が「そらのかけはし」というロケット型の菓子を創作し発射会場で販売した。2日間で2,800個の売り上げがあったそうだ。
ロケットが空の架け橋である様にロケット発射場誘致に使われた税は、未来への投資であり、まさに明るい未来への架け橋と言えよう。「最南端のまちから、ロケット最先端のまちへ。」税と言う未来への架け橋で、串本町をロケット最先端のまちへ繋げてほしい。そして、その未来に僕も納税者として、少しでも貢献できる社会人となっていたい。