鈴木 愛乃
「将来どうしよう。何がしたいのだろう。」高校生になり、このように考えることが多くなった。中学生までは曖昧にできた自分の進路。しかし、高校に入学すると、周囲の友達が徐々にそれぞれの進路に向けて活動し始め、このままでは自分だけが取り残されていくような気がしていた。そのような時、私の心を変えたのが、「進路を悩むのは、それだけ恵まれている証拠やん。」という母の言葉である。
この言葉を聞いた時、テレビで見た、マダガスカルで鉱物の採掘作業を行う子供たちの姿が頭に浮かんだ。彼らは毎日、10メートル以上の深さがある穴の中に入り、死と隣り合わせの状況の中で一日中働いていた。しかし、一日の収入はたったの数十円。この事実を知った時、私は言葉を失った。
「他に方法がないのです。」
「こうする以外に選択肢がないのです。」
発展途上国などの貧困に苦しむ地域で生活する人々が、インタビューでこのように答えているのをよく耳にする。世界には、将来の選択肢がない、生きるためには自分の夢や目標を諦めて働かなければいけないという状況に置かれている人がたくさんいるのだ。
一方で私はどうだろうか。今の私は、将来の選択肢が多すぎるゆえに悩んでいるという状態だ。母の言葉を聞き、進路を悩めるということは本当に幸せなことなのだと実感した。
しかし、このような、幸せな悩みを持つことができるのは、あるものの存在のおかげである。それは、税金だ。私が通っている学校は税金によって建てられ、私が毎日学校で勉強するためにも多額の税金が使われている。また、税金は警察署や消防署、公立病院などにも使われており、私は税金の存在によって、安全で不自由のない環境の下で、毎日学校に通うことができる。そして学校で、多くの知識を得たり、友達や先生方との交流を通して多種多様な考え方に触れたりすることで、自分の視野を広げ、様々な将来像を描くことができている。
また、税金は「経済協力費」として、発展途上国などの国々の経済発展のためにも使われているということを学校で学習した。私たちが納めた税金が、国境を越えて、貧困に苦しむ人々の支えになっているのだ。
税金の存在によって、毎日学校に通い、充実した日々を送ることができる私の前には、数え切れないほどの世界が広がっている。そのため、税金を無駄にしないためにも、毎日真剣に勉学に励み、自分の能力や適性を熟慮して、後悔しない進路選択をしたい。そして、立派な納税者になり、世界の貧困に苦しむ人々の支えになりたい。生まれた環境や社会によって生活が制限されることなく、全ての人が将来に希望を持って生きていくことができるような世界が訪れることを願っている。