和歌山県租税教育推進連絡協議会

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和歌山県知事賞
誰かのために
近畿大学附属新宮高等学校 1年
𠮷良 佳子

今年の夏、祖母のために車椅子を買った。久しぶりに行く家族旅行を楽しみにしていたのに、みんなの歩く速度に付いていけないから、自分は行かずに留守番をすると言い出した。旅行用の車椅子があると知り、祖母にみんなでプレゼントした。私達家族は初めて車椅子の介助を体験することになった。

「スロープある?」これが旅行中第一優先の確認事項になった。段差がこれほどまでに障壁「バリア」になるとは思わなかった。道路にある視覚障害者用の黄色い点字ブロックでさえ車輪を取られる。車椅子の天敵は段差なんだとしみじみ思った。

今は元気で普段の生活を送る祖父母だが、旅行用車椅子の体験で、その先の生活に不安を覚えた。祖父母に介護が必要になったとき、誰が助けてくれるのか。母には仕事があり、私はあと2年で大学へ進学する。旅行から帰っても不安ばかりが膨らむ私の気持ちを見透かして母が言った。「介護保険があるから大丈夫だよ。」

「介護保険」という言葉に疑いを持ちながらも不安は消えず、介護保険について調べてみた。

介護保険は、国民みんなで支え合う制度であり、納めた保険料は全て介護を必要とする方が受けるサービスを賄うために使われている。利用者は、収入に応じて全体の費用の1割から3割を負担することにより所得水準に関係なく誰でもサービスが受けられ、残りの半分は保険料から、あとの半分は国税から支払われる。つまり税金が介護保険制度の半分を支えているということになる。

新型コロナウイルスによる暮らしへの影響が深刻化しているコロナ不況の中、消費税率の引き下げを求める声が出ている。物価も上がり、生活が圧迫されていると最近よく耳にする。「確かにそうだ。」と思っていたが、税に対する思いが転換した。祖父母のような高齢者、母のような現役世代、そして私達若者も将来必ず支援や援助を必要とする日が来るはずだ。誰かの助けを必要とするとき初めて税金の役割や意義、有難さに気づくのではないか。社会保障や福祉制度が充実した豊かな社会を築いていくのは私達自身だ。


国民一人一人が大きな「家族」の一員で、正しく納税することにより助けを必要としている誰かを支えている。いづれ社会に出て、税金を払う立場になったときには、「誰かの助けになりますように」と願いを込め、優しい気持ちで納めたいと思う。

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