髙屋 琴愛
突然のことでした。父が出張中に倒れたという知らせを聞きました。脳梗塞とくも膜下出血の併発でした。母は私と弟を祖母に預けて、慌てて和歌山から父のいる茨城県へ行きました。初めは集中治療室で全く動けない状態でしゃべることもできなかったそうです。なんとか、一命は取り留めたものの、母はこれからの生活がどうなるのか全く見当がつかず、ただただ不安だったそうです。
あれから約10年、父は多くの人に支えてもらい、後遺症は残っていますが、少しずつ元気になっていきました。私は当時、小学生だったのでわからなかったのですが、後に税金によっても、助けられていたということが分かりました。
父は入院中に高額療養費制度を利用しました。高額療養費制度は、1か月間の医療費の自己負担額が自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。自己負担限度額は年齢や収入によって定められています。この制度の財源は、健康保険料と税金です。そして、退院後も家の中への手すり設置や車椅子などの福祉用具の準備、リハビリなどにお金がかかります。ですが、介護保険に加入しているので、負担は本来かかる価格の1割で、残りは保険料と税金でまかなわれています。父は、時には、税金が少なくなってほしいと思ったこともあったそうですが、こういう経験があったことで、税金のありがたさが見にしみてわかったそうです。
さらに、「障害者手帳」を持つことによって、交通機関や高速道路の利用の際や、美術館や博物館を訪れる際に割引されるなど、様々なサービスを受けることができます。この財源ももちろん税金です。障害が残った場合、経済的・精神的な支えを必要とします。こういう制度があることによって、ハンディキャップを抱えていても、人生に希望を見出せることにつながっていくと思います。
また、この作文を書くにあたって、私は税金がなかったらどうなるのかということを調べたり想像したりしてみました。もし税金がなかったら、救急車は有料で医療費も高額になります。そのために病気になっても病院に行くことをためらってしまうかもしれません。学費も高額になって、学校にいけない人も多くなるでしょう。ゴミの収集がないので、街中にゴミが散乱し、警察官がいないため、犯罪も増えるでしょう。本当に大変なことが起こると感じます。このようなことを想像していると、私たちは税金のおかげで安心で豊かに暮らせるのだということがわかりました。
私は、父が倒れた経験と税の作文を書く機会をいただけたおかげで、税金が何に使われているのかを知り、とても大切なものであることに気づかせていただきました。
私も社会に出たら、一生懸命働いて、納税の義務を果たしたいです。そして、今まで受けてきたことに対する恩返しをしていきたいと思っています。
