上谷 南美
「ただいまー。」と疲れた声で帰ってくるのは母だ。母は看護師として、日々命と向き合う現場で働いている。母は看護師として働くことに、人一倍の思いがあるらしい。
母は看護師になる際、「高等職業訓練促進給付金」というものを利用したそうだ。これは、看護師を始めとして保育士・介護福祉士など、就職に有利な資格を習得するために養成機関に通学する場合、一定の給付金が支給される制度だ。月7万円ほどが税金から支給される。子育てをしながら看護学校に通う予定だった母には、ぴったりの制度だった。この制度を町役場でたまたま知った母は、「貰えるものなら一応貰っておこう。」という軽い気持ちで申請したらしい。いざ看護学校に通い始めると、実習や課題、子育てに忙しく、アルバイトなど考える間もなかったという。
そんな状況での毎月の給付は、経済的にも精神的にも本当にありがたかったそう。そして、「このお金を無駄にはできない。社会のみなさんに支えてもらっている分頑張ろう。」と思ったそうだ。そこから学校での勉強に人一倍励んだ。そして卒業時には代表の挨拶もしたそうだ。
それから約10年。母は今では、看護師として働き、地域社会に貢献できていると感じるという。それは、患者さんから「ありがとう」を聞く機会が多いからだそうだ。そして、給付金を頂いた分を今、看護師として働くことで社会に返せている気がするそうだ。
この話を聞いた時、私は驚いた。今まで税金のお世話になったことが、あまりないと感じていたからだ。しかし、意外と身近で、私の知らないうちに税金に助けられていた。もしこの給付金がなければ、今の、何不自由ない生活は送れていないだろう。
この「高等職業訓練促進給付金」の他にも、生活を支援するための素敵な制度は多くある。この事を多くの人に知ってもらい、少しでも幸せな生活を送ってほしいと思う。またそれと同時に、納税することの大切さにも気付いてほしい。普段生活していると消費税や所得税など、税に対してマイナスのイメージが大きいかもしれない。しかし、自分が税金を納めることによって、どこかの誰かを少しずつ助けられる。また、どこかの誰かが少しずつ幸せになっていく。これはどれだけ美しい事だろうか。そう思うと気持ちよく納税できるだろう。
私は税金を、広い意味での『幸せな生活を送るための支援』として使ってほしいと願っている。そして、税金の形がそうある限り、誇りを持って納税していきたいと思う。