和歌山県租税教育推進連絡協議会

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国税庁長官賞
税金の本質を考える
和歌山県立桐蔭高等学校 1年
中山 結夢

「十%に増税なんて、生活が圧迫されるよ。」
「増税ばかり、嫌だね。」

消費税十%増税を目前にし、世間でよく耳にする言葉です。確かに、八%になった時にも買い物をしていた母が、
「何だか物が値上げされた感覚になるね。随分と支払う金額が違うわ。」
と言っていたのを覚えています。『税金』というものの外側だけ、上っ面だけを見ていると、たくさん払わなければいけない消費税や他の税金に、私たち国民は損した気分になるかもしれません。しかし、こうした増税や税金の徴収は、私たちにとって本当に『損』なのでしょうか。消費税十%になる前に、私はしっかりそのメリットについて調べてみたくなりました。

調べてみると、デメリットがあるのはもちろんですが、多くのメリットもありました。一番に目に飛び込んできたのは、『国の財源の安定化』ということです。このことが、さらに私たちの生活に安定をもたらしてくれます。一つは、社会保障制度が充実することです。こうした各種社会保障は、現役世代が負担することで高齢者を支えています。年齢に関係なく全ての世代が負担する消費税は、現役世代への負担を減らす大きな策と言えるかもしれません。そんなことを考えていると、
「本当に助かったんよ。あのときは。」
と、母が口をはさみました。数年前、祖父が突然寝たきり状態になり、母が仕事をしばらく休職しなければならなかったことがありました。末期ガンでした。母は、大好きな仕事を休み、祖父のために一生懸命でした。痛みを訴える祖父のために、やわらかい介護ベッドを借りることにしました。祖父のために何もかもを母一人で頑張る覚悟でしたが、それにも限界がありました。思い切って利用した訪問看護。おかげで、私たち家族は笑顔で祖父の最期を看取ることができました。介護ベッドのお金も、訪問看護の費用も、全てを自分たち家族が負担するとなると、きっと笑顔は消えていたことでしょう。私たち家族を支えてくれていたのは社会保障制度、つまり、税金なのです。

『税金』は、払う時はお金という形です。しかし、そこから『支援』や『援助』というあたたかいものに形を変え、私たちの暮らしに潤いを与えてくれるものです。税金の外側だけを見ているのではなく、こうして税の内側を見てみませんか。すると、「ただの値上げ」だと判断した発言はできなくなるでしょう。私たちを支えてくれているものだと身近に感じ、税に感謝する心が出てくる…私はそんな日本を創って欲しいです。私は今回、この作文を書くにあたり、調べてみることで、そして母と話すことで、税に対して積極的な考えに転換することができました。今では、母も「値上げ」と言わなくなりました。

私も将来、きちんと納税し、社会に支えられる子供から支える側の大人になりたいです。

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