和歌山県租税教育推進連絡協議会

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公益財団法人納税協会連合会会長賞
税にのせる気持ち
和歌山県立海南高等学校 1年
榎本 翠

「大切なものは、まるで空気のようだ。」と、テレビで誰かが言うのを聞いた。いつもそこにあって、でも、なくてはならないもの。そして、その大切さを忘れやすいものだ、と。

消費税が十パーセントに上がることに反対する声は、そこらじゅうから聞こえる。確かに増税すれば、家計が苦しくなる人もいるのかも知れないし、今現在の国のお金の使い方に不満を感じている人もいるのかも知れない。私には、今本当に増税が必要なのかは分からない。しかし私は、また何か私たちの暮らしに、新しい光を与えてくれるだろうと、増える税に期待をしている。

高校に入学してすぐ、教科書のために銀行から多くのお金を下ろした。受け取った教科書は、今までで一番重く感じられた。小中学校では、もっと軽い気持ちで使っていた。無料だったからか。――いや違う。私がお金を払わなかっただけであって、誰かがお金を出してくれていたのだ。つまり私の教育のために、誰かが税を納めてくれていたのだ。そう気付いた時、私は初めて税というものを理解した。税のシステムや、税を納めてくれる人々への感謝、また僅かでも、自分が納めた税が、誰かの役に立つことに感動した。病院でも、祖父がお世話になった救急車も、消防も同じ。税があってはじめて、私たちは暮らしに安心を得られるのだ。それを自ら納め、実現させるのだから、税は私たちが誇れるものだ。

しかしながら、この税に対する社会の厳しい目は一体何なのだろう。どうしても税は暗い印象を受けやすく、増税には苦情がつきまとう。お金、だからだろうか。過去の私は、税金を払うその場での損得しか考えておらず、お金の先にある税の意味を見逃してしまっていた。また、税から成り立つ支援を、あることが当然のものだと思ってしまっていた。私たちは、自分が払ったお金にばかり目がいってしまい、支えてくれるものへの感謝を忘れてしまっているのではないか。そして結果、税を負担であるととらえてしまう。

そんなものではないはずだ。私のように、税への感謝を体験した人が、税による人々のつながりを感じる。災害の復興に使われる税は、支え合いを表す。税は、人々の生活を守り、より豊かにするためにつくられ、みんなの幸せを願って生まれてきた。それを負担だと嘆き、お金の行方ばかり追いかけ、機械的に税を納めることのいかに悲しく残念なことか。私は、お金といっしょに人々や社会を思う優しい気持ちも納めたい。人々をつなぐのは、明るい税であってほしい。難しいことではない。してもらったことに感謝する、基本的な気持ちがあればいい。そのお金が、日本の国をつくり、必ず自分にも返ってくるのだ。

私は、子供も社会も、税への関心が低いように感じる。当たり前の大切を見直し、もっと税を深く学ぶ機会をつくるべきだ。税はこれからも、ずっと私たちと歩み、進化していくものだから。

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