和歌山県租税教育推進連絡協議会

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和歌山県租税教育推進連絡協議会賞
この夏、学んだこと
近畿大学附属新宮高等学校 1年
平瀬 葉乙

七月十日、私の大好きな曾祖父が亡くなった。曾祖父は九十歳を過ぎていたが、とても元気で毎年鮎釣りを楽しんでいた。

その日、いつものように鮎釣りをしようと川に行った時、石で足をすべらせて転倒し、顔が水に浸かってそのまま起き上がることが出来なかった。川の近くの防犯カメラに映っていてわかった。浅い場所だったので近所の方が気づきすぐに消防署に連絡してくれた。救急車とドクターヘリコプターがかけつけてくれた。曾祖父の状態や高齢であることなどから医師の判断で新宮市立医療センターに搬送された。私達も連絡を受け、すぐに病院に向かった。医師や看護師の方が懸命に蘇生しようとしてくれたが、曾祖父が再び息を吹き返すことはなかった。

一分一秒を争う命を救うため出動するドクターヘリコプター。一回の出動で約四十万円、遠方地までの飛行では約百二十万円もかかるそうだ。しかし、国が九割、その他一割を自治体が税金で賄ってくれているため患者側には一切負担がかからない。これはとてもありがたいことだ。

私がドクターヘリコプターについて調べていたら、父がこんな話をしてくれた。父が仕事で本宮に赴任していた頃、十代の学生がバイクで事故を起こし大けがを負った。その当時、救急車で田辺まで一時間半ほどかかる上、救急車には医師も乗っておらず、その方は十分な治療を受けられないまま救急車の中で息をひきとった。その方のお父さんは、ドクターヘリコプターさえあれば助かっていたかもしれないと悔やんでいたそうだ。その約二年後、和歌山県にもドクターヘリコプターが導入された。

ドクターヘリコプターは救急車による搬送に比べて外傷死亡を二十七%、重症後遺症を四十七%減らすことができると言われているが、治療開始が一分遅れれば救命率は十%下がる。和歌山県は本宮まで二十分、新宮までは三十分もかかる。その為早い救急医療を受けることは難しい。このことは税金によって改善することができると思う。

曾祖父は「川で死ねたら本望だ。」と口癖のようによく言っていた。今回のことはとても悲しいことだったが、曾祖父は十分な治療を受け家族が納得できる死だった。その一方で、救急治療を受けられず悔やまれた死があったことも知った。ドクターヘリコプターは悔やまれる死を少しでも減らすことができる。また、尊い命を救うことができるだけでなく身内の人やたくさんの人の心をも救うことができる。ドクターヘリコプターは一機運用するために年間約二億一千万円もの費用が税金によって賄われている。しかし、人の命の重さにはかえることはできないと私は思う。だから、税金は必要不可欠なものだということをこの夏、曾祖父の死と父の話から学んだ。

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