和歌山県租税教育推進連絡協議会

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大阪国税局長賞
夢を託して
和歌山県立新宮高等学校 1年
植地 彩衣

どこからか響いてくる轟音に、私は思わず空を見上げた。雲一つない青空の真ん中にあったのは、一機のドクターヘリだった。私は、ある出来事を思い出した。

去年の秋のことだった。私の曽祖父が意識を失い、ドクターヘリで運ばれたことがあった。車で一時間近くかかる道のりも、ドクターヘリでなら七分。おかげで、私は、大好きな曽祖父を失わずに済んだ。しかし、数日後、家族内である問題が浮上する。ドクターヘリに乗った時の料金は、いくらなのだろう。曽祖父の命を救ってくれた、ドクターヘリ。どれだけの高額を請求されても、仕方がないだろう、私はそう思っていた。しかし、予想外のことが起きる。一円も払わなくていい、ということが判明したのだ。調べてみると、和歌山県のドクターヘリが一回飛ぶのにかかる料金は、約三十万円だという。では、誰が、そんな大金を払ってくれたのだろうか。

税金だった。私は、心から、税金の存在をありがたいと思った。そして、義務を果たして税金を納めてくれている人たちへの感謝の気持ちでいっぱいになった。もしかすると、私が消費税などで納めている税金も、こんな風に誰かの役に立っているのかもしれな。そう考えると、税金を納めていることに、もっと誇りを持つべきだと思った。また、税金は、気付かないうちに人と人を結び付けてくれているのだ、と感じた。

私は、今年から高校生になった。義務を背負って勉強していた去年までとは違い、自分の意思で勉強に取り組むようになったのだ。高校に入って一番驚いたのは、とにかくお金がかかること。義務教育の九年間、どれだけ税金に支えられていたのか、気付かされた。また、去年までの自分には、「税金を使って勉強している」という自覚が足りていなかったと強く思った。それは、苦しい思いをしてまで税金を納めてくれている人たちにすごく申し訳のないことだと思う。だから、これから義務教育を受ける人達には、そのありがたさを理解した上で勉強してほしいと思った。

曽祖父の一件や自分の高校生活を通して、私は、「自分が助けてもらった分、今度は私が税金を通して誰かに恩返ししたい」と思うようになった。困ったときには助け合う。それは、税金でも同じことが言えるはずだ。これからは、前向きな気持ちをもって納税をしていきたいと思った。

この国では、一人ひとりが払った一円の積み重ねで社会が動いている。今この瞬間だって、きっとどこかで、誰かの役に立っているはずだ。私たちの払う税金には、希望が、夢が、たくさん詰まっているのだ。

社会の一員として税金について理解を深め、納税を果たすことが、次世代の私たちの使命である。

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